スタッフ

先藤陽一|制作方

この仕事(画屋)を続けているのはなぜですか?

結婚後、子供の誕生で主夫として育児に専念しようと誓いかけた折り『ニュースレターのカットを描いてみませんか』と、大学の後輩であった小川氏より声をかけられたのが始まりでした。

『会話』や『テキスト』などのコミュニケーション手段に自信のなかった自分にとって、幼いころからチラシの裏やノートの端を埋め尽くして落書きするほど好きで得意だった『描くこと』は唯一水を得た自己表現手段、コミュニケーションツールでした。

そうして一時は漫画家を目指すも手段は持てど、表現したい自己内容自体の乏さに気づき、絵を描く仕事自体をあきらめていた私にとって、画屋という環境は、在阪しながら自分の武器を活かせる稀有な場所であると信じ、以降二十ン年、仕事を続けさせていただいている次第であります。

こだわっていることや、これまでに印象的だった
クライアントや仕事はありますか?

私たちに仕事を任せてくださるお客様から第一に求められている事は『その思いを伝える』ことだと考えております。

そのためには誰が読んでも理解できるわかりやすさが大事です。これはかつて少年雑誌の担当編集さんに特に口酸っぱく注意されたことでして『君の漫画は分かりにくい』と初めて指摘されたときは大変ショックを受け、以降はモノやコトを描くたびに常に心に置くようにしています。

正しくわかりやすく理解してもらうにはにどう見せたらいいか、ここには特に注力しながらなおかつ伝えたい熱、量が減衰することなく伝えられるよう努めています。

船平からの紹介

先藤さんは空間把握能力に秀でていて奥行のある画面作りが得意な先輩です。
作画力に目を引かれがちですが、この方のすごさは他にもあります。読解能力とイメージ力が非常に高いのです。

具体的な例を挙げましょう。「今回は〇〇で、□□みたいな感じですかね…××する印象にしたいです」というざっくりとした情報と要望を先藤さんに伝えるとします。すると、3割増しくらいにわかりやすくなった表現の作画が上がってくるのです。これは誰にでもできることではなく、読解力があった上に嚙み砕いた表現をデフォルメして書き出す能力が必要な作業です。

作画やわかりやすさへのこだわりが強いのには真摯に「伝えること」に向き合っている気がしますね。基本的に面倒くさがりなのに、後輩が困っていると手を差し伸べてくれる優しさがあります。

小川からの紹介

先藤さんとの出会いは大学の漫画サークルでして、先輩なんですが年は同じという、ちょっと複雑な関係です。学生時代に、ただ者ではないと感じたのは「ザク」を何も見ずにアウトライン一発で描いているのを見たときでした。普通の人は、頭、胴体、腕、脚とあたりを取って描いていくと思いますが、アウトラインを描いてから中のパーツを描いていくということは、紙の上にハッキリとイメージがあって、それをなぞる感じで「ザク」を描いていくわけです。物の形をイメージする能力と記憶力が高くなければできない技で、当時の私はそれを驚愕しながら見ていたことを覚えています。当然、プロを目指していると思っていたのですが、落書きばかりで、在学中に漫画を描いている姿を見ることは一度もありませんでした。

大学卒業後しばらくして、先藤さんが勤めている会社を辞めて、雑誌に漫画の投稿をしているらしいと言う噂を他のOBから聞いて連絡をしたと思います。その時の原稿も見せてもらいましたが、在学中は一切そんなそぶりはなかったのに、何かの賞を受賞していたと思います。影で努力するタイプの人だなと思いました。

仕事では主に作画担当をお願いしています。クライアントからの評価も高く、作画で重要な画力や構図、構成力は画屋でトップの能力ですし、広告や販促のなどプロモーションの分野で漫画を描いているクリエイターの中ではトップクラスの能力があると思います。ご家族からの評価を聞いたことはありませんが、とても家庭を大切にされている所も先輩の特長のひとつだと思います。

その後、いろいろありましたが、仕事で20年以上、プライベートも入れると30年以上も関係が続いている、たいへん頼りになる先輩です。

作画サンプル