部下の不始末に対する上司の責任
社長 こんにちは。
Aさんについて相談です。
中川 はい、なんでしょうか?
社長 Aさんは営業をしています。先日、ある会社から大口の受注をしました。ところが、納品後その会社の行方が分からなくなったのです。
中川 いわゆる取り込み詐欺ですね。
社長 大損害です。
中川 それはお気の毒です。
その会社は新規の取引だったのですか?
社長 そうです。
新規取り引きの決済を受けないで、Aさんの独断で取引をしました。
当然のことですが、Aさんは懲戒処分します。人事考課の査定も厳しくなるでしょう。
中川 Aさんはどうして独断で取引をしたのですか?
社長 営業目標が未達のため、あせっていたとのことです。未達に対する責任感からです。
でも、取引先を見極めることに、もっと責任を持ってもらいたいものです。
中川 当然ですね。
ところで上司の責任はどうするのですか?
社長 え?
責任はAさんにあります。
上司は関係ないでしょう。
中川 上司はAさんを監督する義務があります。部下の仕事を把握していないのは職務怠慢です。
社長 うーん。
弊社は中小企業です。上司といえどもプレイイングマネージャーなのです。上司も営業目標達成に必死です。
中川 そうですね。
しかし、上司でしょう?
プレイイングマネージャーは部下を監督しないで良いのですか?
社長 そうは言いませんが、同情すべき点もあります。
中川 では、上司は今回の件は不問に付すのですか?
社長 上司が直接関与しているわけではありません。責任を追及したくありません。
中川 上司も懲戒処分をすべきです。
社長 どうしてですか?
中川 上司の監督が不十分であったことが遠因と言えますよ。
上司も自身の営業目標達成があるからといって、部下の指導監督を免れるわけではありません。
社長 そういうものですか。
中川 申し上げにくいですが、社長にも責任がありますよ。
社長 え?
中川 上司が自信の営業目標に追われて、部下の教育指導ができない状態にしていることが遠因とも言えます。
社長 そこまでいいますか。
中川 はい、そこまでいいます。社内の新規取引決済前に取り引きをしたことは問題です。
しかし、それを許すあるいは見逃す管理体制だったということです。
社長 私も責任を負って減給処分ですかね。
中川 それは、社長のご判断です。
社長ご自身の役員報酬を減額することを発表したら、緊張感が増すでしょうね。
社長 役員報酬は途中で変更ができないのですが。
中川 今回の件で減額することは、社会通念上相当のものですからOKです。
社長 分かりました。
上司と私も責任をとります。
部下の不祥事は原則として上司にも管理監督責任があります。
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