退職後同業者へ就職するのを止めさせたい
社長 こんにちは。きょうは、係長の退職についてご相談があります。
中川 係長と言いますと誰ですか?
社長 営業のA係長です。
中川 退職理由はなんですか?
社長 はっきりと言わないのです。
一身上の都合と言っているようです。
中川 それでご相談とは?
社長 私の勘ではA係長は同業他社に就職するような気がします。
中川 どうしてそう思うのですか?
社長 最近、うちの給料が安いということを言い始めました。
最近、賞与を支給したののですが本人が期待したほどの額ではなかったようです。
上司に公平に評価してほしいと詰め寄ったようです。
中川 自分にたいする評価が不満なのですね。
社長 それほど、営業成績も良くないし、リーダーシップ力も低いので辞めてもいいのですが、同業者に就職されるとうちの営業秘密を持って行かれることが困ります。
中川 それは困りましたね。
社長 同業者に就職しないという誓約書を出させることはできませんか?
中川 同業者にどんな秘密を漏らされると困りますか?
社長 営業ですから、顧客情報を持っています。ライバル会社に知られたくないです。
中川 他には?
社長 うちの仕入れ値や営業方針も筒抜けになります。
中川 それは営業に支障がありますね。
社長 同業者に就職させないことができますか?
中川 無理でしょうね。
社長 無理ですか。
中川 退職した人は同業種に就職する傾向にあります。社長のところの社員も以前は同業種で働いていた人ではありませんか?
社長 確かに、その傾向がありますね。
中川 同業種で働いていた人を採用した後、同業者の情報を得ましたか?
社長 期待していましたが、たいした内容ではありませんでした。
中川 前の会社の顧客を新規顧客にしてくれましたか?
社長 それはないですね。
うちにはうちのやり方がありますし。
中川 A係長も同じようなものでしょう?
社長 うーん。
確かに。A係長の担当している顧客がA係長が転職しても簡単にうちとの取引を変更するとは思えません。
中川 ということです。
同業者に就職することに過敏になることはありません。
社長 でも、同業者に就職してほしくありません。
中川 では、競業避止契約書を提示し署名捺印をもらってください。
社長 これで効力はありますか?
たとえば、同業者に就職したら裁判に訴えるとか、払った退職金を戻してもらうとかできますか?
中川 無理でしょう。
社長 無理なら意味がありませんね。
中川 心理的な抑制力が働きます。それに期待しましょう。
社長 その程度ですか。
中川 はい、係長という立場は重要な機密情報を持っていません。
社長 どんな情報が機密情報ですか?
中川 簡単には言えません。
事業に重大な影響を与えるようなものです。
社長 そんな情報はうちでは部長クラスなら持っていますが。
中川 それがポイントです。
管理職で機密情報を持っている人が辞めるときに、同業他社に就職してはいけないという誓約書は効力があります。
社長 では、今回は効力がないかもわかりませんが念のため競業避止契約書を書かせます。
職業選択の自由が法律で保証されていますので、同業者に就職することを止めることは困難です。
最近、量販店の店長が同業者に就職した事件がありました。
店長は競業避止契約書を提出して退職したのですがそれを守らなかったのです。
これは裁判で争われ、店長は敗訴しました。
店長は重大な秘密情報を持っているので、同業者に就職するともとの会社は重大な損害を受けるというのが判決の理由でした。
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