私生活の犯罪行為は懲戒できるか?
中川 こんにちは。
社長 こんにちは。
今日はAさんのことで相談します。
中川 はい、なんでしょう?
社長 Aさんは酒癖が悪く、家宅不法侵入で逮捕されました。
中川 そうですか。
どんな状況だったのですか?
社長 玄関を間違えて隣の家に上がり込んだのです。
それで、その家族に暴言を吐いて出て行かないのです。
Aさんの奥さんは旅行に出かけていてどうしようもない。
しかたがないので、警察に依頼したところ抵抗し現行犯逮捕されました。
中川 そうですか。
たびたびそういうことがあるのですか?
社長 逮捕されたのは初めてです。
酒癖が悪く時々騒ぎになっていますが。
中川 困った人ですね。
社長 で、今回は逮捕されたので会社としても懲戒処分をしたいと思います。反省してもらわないと会社も困ります。
中川 会社は何が困るのですか?
社長 従業員に迷惑をかけていますし、会社の名誉も傷つけられました。
中川 どの程度ですか?
社長 どの程度っていっても、こういうものは数字で表せないでしょう。とにかくけしからん。
中川 で、本人はどうなりましたか?
社長 すぐに釈放されました。
中川 そうですか。
判例をみるとその程度で懲戒処分はできないような気がします。
社長 そうですか。
中川 仕事中の事件でしたら懲戒処分の対象になります。
しかし、今回の事件は私的生活の中で起きています。懲戒処分は難しいでしょう。
社長 でも、以前に中川さんは電車内での痴漢行為は懲戒処分の対象になると言っていましたよ。話に一貫性がありませんが。
中川 するどい指摘ですね。
これは痴漢だから懲戒処分できる、不法侵入はできないという単純なものではありません。
会社の業務内容、職務内容などとも関連してきます。したがって、個々に判断するのです。
社長 そんな難しいことを言われても判断できません。
中川 そうですね。
中川も判断できません。
社長 判例ではどのようなものがあるのですか?
中川 私生活上の犯罪が懲戒処分Okとなった判例を紹介します。
1.鉄道会社の社員が他社の車内で痴漢行為をした
2.宅急便のセールスドライバーが酒気帯び運転をした
社長 なるほど、少しですが仕事と関連性がありますね。
確かに鉄道会社の社員は痴漢を防止する立場にありますからね。運送会社はドライバーの自覚が他の業種より求められますね。
中川 私生活上の犯罪で懲戒処分をしたのは無効とされた判例です。
1.現場労働者(管理職でない)が泥酔して他人の家に侵入した
2.現場労働者が米軍基地に立ち入り逮捕され報道された
社長 ふーん。現場の労働者がキーワードですか。管理職だと異なった判決になった可能性があるのですね。
中川 そうです。
でも、現場の労働者であっても仮に殺人事件で逮捕された場合は懲戒の対象となるでしょう。
ただし、昨今は誤認逮捕が相次いでいます。逮捕された事実だけで懲戒処分をするのは止めた方がいいですね。
社長 そうですね。
逮捕後の処分を見て判断ですね。
業務遂行と関連していない犯罪の懲戒処分は慎重にしましょう。
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