事業主の責任が問われる理由
社長 こんにちは。
労災について質問します。
中川 はい、何でしょうか?
社長 たとえばクレーンを操作する場合は吊り荷の下には人がいないことを確認するように指導しています。
にもかかわらず、オペレーターが指導を無視して操作した結果、人にケガをさせたとします。
これはオペレーターの責任ですよね。それでも会社に責任があるというのが納得できません。
中川 どうして納得できないのですか?
社長 だって、指導を無視しているのはオペレーターです。法律でも禁じられている行為をしているのです。
だから、オペレータに責任があります。
会社としてはちゃんと教育指導をしているのです。それでも会社、つまり事業主である私まで責任があるといわれるのは変でしょう。
中川 たしかに、
違法行為をしたのはオペレーターです。
したがって、オペレーターは違法行為をしたことで罰せられます。
社長 そうそう、それが正義というものです。
経営者、つまり私には何の落ち度もないです。何の落ち度もない私を罪に陥れるのは国家の陰謀です!
中川 国家の陰謀ですか…。あのう、オペレータは御社の社員ですよね。
社長 そうです。
それがどうかしましたか?
中川 オペレーターは会社に指示を受けて仕事をしていますよね?
社長:それはそうですが、違法な行為をしろとは指示していません。
中川:そうですね。
でも、仕事としてクレーンを操作しているのですよね?
社長 そりゃあそうです。
中川 ところで、どのくらい指導していますか?
社長 ときどきです。
中川 それでも違法行為をする場合は指導不足かもしれませんよ。
社長 徹底するのは難しいです。
中川 難しいといっても、もし、それが原因で死亡したり大けがをしてもいいのですか?
社長 ムムム…。
中川 オペレーター本人も違法行為で罰せられますが、オペレーターを使用している事業主も罰せられるのです。
社長 どうしてですか?
中川 違法の防止を徹底するためです。
社長も従業員の違法行為の責任を問われるとなると、もっと熱心に違法行為をしないように指導するでしょう?
社長 たしかに。
中川 このように、違法者だけでなくそれを使用している事業主も罰せられることを両罰規定といいます。
社長 そんなことが法律に書いてあるのですか?
中川 はい、労基法121条、安衛法122条に明記されています。
社長 より真剣に指導するように改善します。
労基法、安衛法は違法行為の本人と法人の両方が罰せられます。
これを両罰規定といいます。
労基法
第121条
この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても各本条の罰金刑を科する。
安衛法
第122条
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第百十六条、第百十七条、第百十九条又は第百二十条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
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