悪天候で早退した場合の賃金
社長 こんにちは。
Aさんから苦情が来ました。
中川 はい、どんな苦情ですか?
社長 先月、天候が荒れて交通機関がマヒしました。それで、14時頃Aさんは帰宅が心配で早退しました。
その早退分が給料から差し引かれているのはおかしいというのです。
中川 どうしてそう言うのですか?
社長 上司に許可を得て退社したのだから、会社が早退を指示したのと同じである。また、悪天候で帰宅ができるかもわからない特別な状態である。
だから、早退は当然のことであり、何も悪いことをしていないと。
中川 なるほど。
社長 感心している場合ではありませんよ。
Aさんの苦情はおかしいですよね?
中川 他の社員はどうしたのですか?
社長 早退したのはAさん一人です。
中川 他の人は無事に帰宅できたのですか?
社長 中には帰宅をあきらめて近くのホテルとかネットカフェで宿泊した人もいます。
中川 帰宅をあきらめた人の宿泊費などはどうしましたか?
社長 気の毒ですが自己負担です。
中川 と言うことです。
社長 はぁ?
どういうことですか?
中川 Aさんの早退は自己都合です。
当然、早退分は賃金から控除することになります。
社長 ただ、上司の了解を得ているからと言うのですが。
中川 それは、たとえば体調不良で早退したのと同じです。
体調不良で上司の許可をえて早退したとしても、その早退は会社に責任はありません。今回は、悪天候ということが原因です。
Aさんに責任はありませんが、会社にも悪天候の責任はありません。
社長 そうですね。
そのようにAさんに話します。
悪天候による交通機関のマヒは会社に責任がありません。したがって、会社が何らかの補償をする義務はありません。ただし、悪天候という不可抗力の場合は特別な措置をすることも考えられます。
2011年3月11日の東日本大震災で公共交通機関がマヒしました。
その時の各社の対応を調査したデータがあります。
(労政時報 第3796号より)
地震発生日(3月11日)に帰宅が困難になった社員への対応(複数回答)
1.宿泊施設を提供斡旋した 15.7%
2.社内の施設設備を開放した 77.7%
3.通常以外に要した交通費全額支給 53.0% (タクシー代等)
4.通常以外に要した交通費一部支給 5.0%
5.その他
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