残業代を払っている意味がある?
社長 こんにちは。
今期の売上げは目標を達成しそうです。
中川 それは慶賀(けいが)に存じます。
社長 なんですか、その形式的な言葉は。
中川 おめでとうございます。
社長 ありがとうございます。
しかし、めでたくないのです。
中川 どうしてですか?
社長 利益が減っているのです。
中川 へ?
売上が伸びているのに?
変ですね。
社長 社員は残業までして必死に売上げ目標を達成してくれたのです。
だから、どうして利益が減るのか…。
中川 ひょっとしたら、売上を上げるために残業が増えたのでは?
社長 それは当然です。
残業をしてがんばってくれたのですから。
中川 それが利益が出ていない原因ですよ。
社長 どうして、社員が残業をしたら利益が減るのですか?
残業をして売上を伸ばしているのですよ。
中川 ひょっとしたら、残業の効率が悪いのではないでしょうか?
社長 残業の効率が悪い?
社員はがんばってくれているのです。
効率が悪いとは考えられません。
中川 社員ががんばってくれていることは間違いないのでしょう。
しかし、残業代以上の仕事をしていないと利益が減りますよ。
社長 残業代以上の仕事をしていることはどうやって調べるのですか?
中川 残業をしたことでいくら売上が増えたかを確認していますか?
社長 いちいちそんなことをしていません。
中川 確認はそう難しくないですよ。
社長 どうするのですか?
中川 社員に残業をしたことで売上がどの程度増えたかを報告させるのです。
きちんとすると面倒ですから、おおざっぱでいいからといって報告させるのです。
社長 それで何が分かるのですか?
中川 残業の効率が分かります。
社長 どんなふうに分かるのですか?
中川 たとえば、Aさんが売上を伸ばすために新たに月に30時間残業をしたとします。
Aさんの30時間の残業代はいくらですか?
社長 おおよそ5万円です。
中川 御社の粗利はいくらですか?
社長 50%です。
中川 労働分配率はいくらですか?
社長 50%です。
中川 では、Aさんは残業をしたことで20万円以上の売上増になっているかどうかを確認するのです。
社長 あのう、残業代が5万円ですから、売上は5万円以上であれば利益がでると思いますよ。どうして20万円以上ないとダメなのですか?
中川 5万円人件費が増えると粗利は10万円以上ないと利益が減ります。
粗利率が50%ですから、売上は倍の20万円(=10万円÷0.5)となります。
20万円以上の売上があれば労働分配率が50%のままで利益も増えます。
これが理想です。
労働分配率が50%ですから、少なくとも10万円(=5万円÷0.5)売上増でなければ利益は増えません。(単純計算です)
しかし、20万円未満であれば労働分配率が上がりますので、労働生産性が低下したことになります。
御社が売上増になったのに利益が減った原因はAさんのばあいは5万円の残業をしているのに売上が10万円に満たないからと思われます。
社長 人件費の4倍の売上ですか…。
そうか、売上ばかりに目が行きがちですが、利益が増えなければ意味がありませんね。
中川 売上はわかりやすい指標なので売上を目標でもいいでしょう。
Aさんには30時間残業をするなら売上が20万円以上になる仕事をするように指示をすることです。最低ラインは10万円です。
社長 わかりました。
来月から残業代と売上の比較をする報告書を出させます。
中川 がんばってください。
変動比率が50%、労働分配率が50%の場合、増えた残業代の最低でも2倍以上の売上が増えないと経費倒れになり利益が減る可能性があります。
4倍以上が理想です。
今回の記事は分かり易くするためにAさんだけで説明をしました。
実際はこのように単純ではないですが。
残業の見直しのヒントになれば幸いです。
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