実態に合わせる
社長 こんにちは。
就業規則で他社の事例から注意点があれば教えてください。
中川 そうですね。
A社の事例をお話ししましょう。
A社の社長は若いのですが、急成長させました。
社長 ほう、たいしたものですね。
中川 しかし、就業規則がいい加減でした。
社長 どんなことですか?
中川 就業時間は9時~17時で休憩は1時間となっています。
社長 ということは、8時間拘束の7時間労働ですね。基準法では8時間ですが、7時間とはたいしたものですね。
中川 A社の社長は大企業に勤務したことがあり、その時の就業規則をアレンジしました。労基法では8時間となっていることもご存じなかったのです。
社長 でも、それで経営ができるのであれば良いではないですか。
中川 そうですね。
しかし、従業員は夜遅くまで働いており残業時間が多いのです。
社長 残業代はちゃんと払っているのですか?
中川 営業手当を月額3万円支給しています。
社長 なるほど。
中川 しかし、実態は3万円を超える残業時間でした。
社長 ありゃ、それはまずいですね。
中川 そうです。
労基署に入られて残業代不払いを指摘されました。
社長 どんな指摘ですか?
中川 残業代を払っていないと。
社長 でも、営業手当を払っているのではないですか?
中川 労基署は営業手当は単なる手当であり、その分を含めて残業代を計算するようにとの指摘です。
社長 営業手当は残業代だと主張すればいいではないですか。
中川 しかし、就業規則や賃金規程には営業手当が残業代であるとは書かれていなかったのです。
だから、単なる手当だと言われたのです。
社長 では、たとえば賃金規程に営業手当は残業代だと書いておけば良かったのですね。
中川 ピンポーン!
それから何時間相当分かも明記する必要があります。たとえば残業20時間分とか。
社長 そうですか。
中川 A社のもう一つのミスは就業時間を7時間としていることです。だから残業代が増えるので営業手当3万円では間に合わないのです。
もし、労基法どおり8時間としておけば3万円以内に収まっていたのですが。
社長 そうですか。
うっかりしそうですね。
就業規則は実態に合わせる必要があります。
実労働時間が7時間でも経営が成り立つのであれば大いに結構です。
しかし、多くの中小企業はそんな余裕はありません。
労基法どおりの8時間にするのが現実的な対応でしょう。
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